家事代行の利用規約・契約書の作り方

家事代行の利用規約は、作業の現場で迷ったときに、スタッフと利用者の両方が立ち返る書類です。現場で起きることの順番に条項を並べます。

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「家事全般」とだけ書いた契約では、エアコンの分解清掃も、高所の窓拭きも、ペットの世話も頼まれ得ます。断る根拠を、規約に書いておきます。

このページの要点

  • 掃除・料理・洗濯などの家事を時間単位で行う契約は、仕事の完成ではなく事務の処理を約束する準委任の性質が強い(民法656条)。完成を約束しない書き方にそろえる。
  • 作業の範囲と、行わない作業(危険な場所での作業、資格が必要な作業、高価品の取扱いなど)を列挙し、当日の追加・延長の手順と料金を決める。
  • 利用者の不在時に作業するなら、鍵の受け渡し、入室の記録、作業後の連絡の方法を決める。
  • 賠償の上限を設けても、故意・重大な過失による損害や、消費者の生命・身体の損害まで免れる書き方はしない(消費者契約法8条1項・10条)。

規約は「現場で迷ったとき」のための書類

家事代行の利用規約は、契約の日よりも、作業の現場で読まれる書類です。「ついでにこれも」と頼まれたとき、約束の時間を過ぎそうなとき、家の中で物が壊れたとき、利用者が不在のまま作業するとき。スタッフも利用者も、その場で規約に立ち返れるように作ります。

条項は、現場で起きることの順番に並べると、読む人に伝わりやすくなります。

家事代行の1回の流れと、規約で決めておくこと

  1. 予約

    申込みの方法、契約の成立時期、スタッフの指名の扱い、予約の変更とキャンセル

  2. 訪問

    入室の方法(在宅か不在か)、鍵の受け渡し、訪問交通費、到着が遅れた場合

  3. 作業

    作業の範囲と行わない作業、当日の追加と延長の手順、用具・洗剤の用意、利用者の協力

  4. 事故

    家財の破損・紛失の申告と賠償、賠償の上限、保険、スタッフのけが

  5. 作業後

    作業の報告、仕上がりへの申出の期限、料金の支払、領収書

  6. 継続・終了

    定期利用の変更・休止・解約、規約の変更、契約の解除

作業範囲と、行わない作業

作業の範囲は、規約の本文で「サービス内容一覧による」とし、別紙の一覧表で具体的に決めます。一覧表は、○(対応する)・△(条件付き)・×(対応しない)の3つの記号と、条件・理由の欄で作ると、現場で迷いません。

行わない作業は、本文にも一覧にも書きます。典型は、医療行為、介護保険の対象になる身体介護、高い場所や危険を伴う作業、専門的な修繕、危険物の取扱いです。高齢者の生活の手伝いを併せて行う事業では、「医療行為は行いません」の一文だけでは線引きが粗く、服薬の介助、入浴・排泄・移乗の介助、食事を口に運ぶ介助など、行わない行為を具体的に列挙しておく必要があります。

事務所の改訂例:条件付きの作業の書き方

高齢の利用者の通院の付き添い

改訂前可能な範囲で通院に付き添います。(依頼者原案)

改訂後次の全ての条件を満たす場合に限り、通院に付き添います。①ご自身又は普段お使いの補助具で移動できること、②抱き上げ・移乗などの身体を支える介助が不要であること、③診療への同意や服薬の管理をスタッフが行わないこと、④経路・受診先・緊急連絡先・交通費を事前に確認できること。

「可能な範囲で」はスタッフごとに判断が分かれます。条件を全て並べ、「全てを満たす場合に限る」とすると、受けられない場合に断る根拠にもなります。

範囲外の作業を頼まれた場合

改訂前範囲外の作業でスタッフが起こした事故について、当社は一切責任を負いません。(依頼者原案)

改訂後利用者は、スタッフに対し、サービス内容一覧の範囲外の作業を指示しないものとし、スタッフはこれに応じません。

範囲外でも、スタッフが業務の機会に行った行為には事業者の責任が問われ得ます。免責で逃げるより、範囲外の指示をしない・応じないことを双方の義務にする方が、事故そのものを防げます。

当日の追加作業と延長は、誰が決めるか

現場で「ついでにこれも」と頼まれる追加作業は、①範囲内で時間内に収まるもの、②範囲内だが延長が必要なもの、③範囲外のもの、の3つに分かれます。規約では、②は料金表の延長料金によること、③は受けないか別の申込みによることを決めておきます。

見落としやすいのが、追加や料金を誰が決めるかです。スタッフが現場で料金の割引や作業の追加を約束すると、事業者として説明していない契約の変更が生まれます。事務所が手がけた規約では、スタッフと利用者が直接連絡を取る運用を始める際に、次のような条項を置きました。

条文例第◯条(担当スタッフとの連絡)

  1. 当社は、日程の調整、サービス内容の確認その他の連絡のため、担当スタッフが当社の公式アカウントを通じて利用者と連絡することを認めることがあります。
  2. 前項の連絡は、日程の調整、サービス内容の確認その他これらに付随する連絡に限るものとし、料金の変更、契約の成立又は解除、キャンセル料の減免その他契約上重要な事項の決定は、当社が別途正式に案内します。

スタッフ側の契約書にも、「料金・割引・返金・キャンセル料の減免その他契約条件の決定は事業者に専属し、スタッフは独自に決定し又は約束してはならない」という対の条項を置くと、両側から同じ線を引けます。

なお、利用者の家で範囲外の追加サービスを有償で申し込んでもらうと、その追加の契約は訪問販売に当たり得ます。追加の申込みは後日オンラインで受けるか、訪問販売の書面とクーリング・オフを前提に運用します。

在宅か不在か:入室の方法で規約が変わる

家事代行は、利用者が在宅している間に作業する場合と、不在の間に鍵を預かって作業する場合とで、リスクも必要な書類も変わります。規約では、どちらを原則とし、不在時の作業をどの条件で受けるかを決めます。

在宅と不在の違い
項目在宅中の作業不在中の作業
入室利用者が開錠する預かった鍵・暗証番号で入室する
必要な書類規約・申込書規約・申込書に加えて、鍵お預かり同意書
作業の確認その場で確認してもらう写真などで作業の開始・終了と結果を報告する
トラブルの例作業内容の行き違い鍵の紛失、物がなくなったという申出、施錠の確認

不在中の作業を受けるなら、入室と退室の記録の方法、施錠の確認、作業後の報告の方法を決めておきます。鍵の預かり方は、鍵の預かりと留守宅での作業のルールで詳しく扱います。

利用者にお願いすること(協力義務)

規約には、事業者の義務だけでなく、利用者にお願いすることも書きます。作業の安全と、トラブルの予防のためです。

  • サービスに必要な情報(作業の場所、注意してほしい家財、アレルギーなど)を正確に伝えること
  • 現金・貴重品は、作業の場所から離れた所に保管すること
  • 刃物や薬品などの危険物を、スタッフの手の届かない所に保管すること
  • 作業に必要な用具・洗剤を用意すること(事業者が持ち込むオプションを除く)
  • 範囲外の作業や、危険な作業、法令に反する作業を求めないこと

ただし、協力義務を書いたからといって、事業者の責任がなくなるわけではありません。「貴重品の申告がなかった場合、当社は一切責任を負わない」と書くより、「申告がなかった事項に起因する損害は、当社がその事項を知り得なかった限りで責任が軽減される」と書く方が、有事に通りやすくなります。

料金・支払・料金表の位置づけ

料金は料金表に書き、規約の本文には料金の決め方と支払の方法・時期を書きます。依頼者の原案でよく見かけるのが、「料金表はホームページ掲載の最新版を唯一の正とし、規約と食い違うときはホームページが優先する」という条項です。

事務所の改訂例:料金表の優先順位と改定

料金表と規約の関係

改訂前料金表・サービス内容一覧はホームページ掲載の最新版を唯一の正とし、契約書・規約と齟齬が生じた場合はホームページ最新版が優先します。(依頼者原案)

改訂後書類の優先順位は、①サービス利用契約書、②利用規約、③各種同意書、④サービス内容一覧、⑤料金表の順とします。料金を改定するときは、効力が生じる日の60日前までに通知し、改定の幅が一定の割合を超える場合は改めて同意を得ます。

中核の条件である料金を、事業者がいつでも一方的に変えられる構成は、消費者契約法10条などとの関係で危うく、しかも「その日の最新版が何だったか」を後から証明できません。改定の手続を条文にし、過去の料金表を保存しておきます。

遅延損害金は、消費者との契約では年14.6%が上限です(消費者契約法9条1項2号)。現金での支払を例外的に認める場合は、スタッフが受け取った現金を事業者が受け取ったものとして扱い、領収書を事業者が発行する、と書いておくと、二重払いの心配がなくなります。

スタッフを守る条項

家事代行のスタッフは、利用者の家という閉ざされた場所で一人で働くことが多い仕事です。規約の禁止事項には、利用者からスタッフを守る項目も入れます。

条文例第◯条(禁止事項)

  1. スタッフに対する性的な言動、暴言、威圧その他のハラスメント行為
  2. スタッフの引抜き、当社を介さない直接の雇用・契約の勧誘
  3. サービス内容一覧の範囲外の作業、危険を伴う作業又は法令に反する行為の要求
  4. 飲酒・喫煙の強要
  5. 前各号のほか、スタッフの安全又は尊厳を害するおそれのある行為

禁止事項に違反した場合は、サービスを中止し、契約を解除できる旨を定めます。その場合も、返還しないのは「すでに提供したサービスの料金」に限ります。未提供分まで返さないとすると、消費者契約法との関係で問題になります。

利用者の家で感染症の患者が出た場合、スタッフの安全が脅かされる環境の場合、気象警報で安全な訪問が難しい場合も、事前の通知なくサービスを中止できる事由として挙げ、その場合の料金の扱い(不可抗力なら請求しないなど)まで決めておきます。

契約者の判断能力と、代理人

高齢の方の家事を手伝うサービスでは、契約者の判断能力に配慮した規定も必要です。意思能力を欠く人がした契約は無効になります(民法3条の2)。依頼者の自己改定版を基に協議して、次のような規定と、申込書の「代理人」欄を設けました。

  • 未成年者は親権者の同意を得ること、成年被後見人については成年後見人が代理して契約すること、被保佐人・被補助人その他判断能力に不安がある場合は、保佐人・補助人等の同意又は代理の権限を確認すること。代理の権限を証する書面の提示を求められること
  • 利用中に判断能力が変化したと合理的に判断した場合は、家族や法定代理人と協議して、継続・変更・終了を検討すること
  • 費用を負担する契約者と、サービスを受ける人が違う場合は、申込書で両者を分けて記載すること

サービスを受ける人の健康の情報を誰から同意を得て受け取り、作業の報告を誰に伝えるかは、家庭の情報・子どもの情報の扱いで解説しています。キャンセル料や定期利用の解約の決め方は定期契約とキャンセル料、破損のときの賠償は破損・紛失の賠償と保険をご覧ください。

規約の変更と、同意の取り方

家事代行の規約は、多数の利用者に同じ内容で示す定型約款(民法548条の2)として作るのが一般的です。定型約款に当たる場合、すでに契約している利用者に変更を及ぼすには、変更が利用者一般の利益に適合するか、契約の目的に反せず、変更の必要性や内容の相当性などに照らして合理的であることが必要で、効力が生じる日と変更後の内容を事前に周知します(同法548条の4)。

規約で「変更の30日前までに周知する」などの期間を自ら決めている場合は、改定版を公開する日から効力が生じる日まで、本当にその期間があるかを日付で確認します。利用者の権利を実質的に制限する変更は、個別に同意を得る方が確実です。

ご相談の場面から:利用規約のご相談

ひな形の規約をそのまま使っています。何が問題になりますか?
汎用のひな形には、成果物の納品・検収、知的財産権の帰属など、家事代行では使わない条項が入っていることが多くあります。使わない条項が残っていると、規約全体が実態と合っていない印象を与え、紛争のときに「この規約は本件には当てはまらない」と主張される入口になります。家事代行の流れに合わせて組み直すことをお勧めします。
規約が長くなりすぎて、利用者に読んでもらえません。
作業の範囲は一覧表に、料金は料金表に、細かな手順は案内文に移し、規約本文は紛争のときに必要なルールに絞ると短くなります。そのうえで、申込みの時に要点(キャンセル料・鍵・賠償)を別に示すと、読まれる規約になります。

よくあるご質問

家事代行の利用規約に必ず入れる条項は何ですか?

作業の範囲と行わない作業、申込みと契約の成立、料金と支払、キャンセル料、鍵の取扱い、破損・紛失時の賠償と上限、禁止事項、サービスの中止と契約の解除、規約の変更、個人情報の取扱いです。作業の範囲と料金は別紙の一覧表・料金表にすると管理しやすくなります。

「料金はホームページの最新の料金表による」と書けば、いつでも値上げできますか?

できません。料金という中核の条件を事業者が一方的に変えられる条項は、消費者契約法10条などとの関係で問題になります。事前の通知期間や、大幅な改定のときの同意の取り方を規約に書き、過去の料金表を保存しておきます。

スタッフが現場で追加の作業を引き受けてもよいですか?

範囲内で時間内に収まるものは受けてもかまいませんが、料金の変更や範囲外の作業の約束は、事業者が決めることとし、スタッフは独自に約束しないと規約とスタッフとの契約の両方に書いておきます。利用者の家で有償の追加サービスを申し込んでもらうと、訪問販売に当たる場合があります。

利用者がスタッフに細かく指示を出すのは問題ですか?

何をするかの要望は契約の内容として受け、どのように行うかは事業者とスタッフが決める、という線を規約に書いておきます。スタッフが利用者の直接の指揮命令の下で働く形になると、偽装請負の問題が生じ得ます。

規約の遅延損害金は、何%まで定められますか?

消費者との契約では、年14.6%が上限です(消費者契約法9条1項2号)。これを超える部分は無効になります。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の事業に必要な条項は、サービスの内容、スタッフとの契約の形(雇用・業務委託)、申込みの受け方、利用者が事業者か個人かによって異なります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた家事代行・ベビーシッター・訪問型サービスの利用規約、申込書、スタッフとの業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / こども家庭庁 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド

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