家事代行・ベビーシッターのマッチングサービスの規約

マッチングサービスでは、運営者が何を約束し、何を約束しないかを、利用者と担い手の両方に分けて示すことが、規約の中心になります。

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「当サービスは場を提供するだけです」と書いても、運営者がシッターを選び、料金を決め、作業を指示していれば、運営者自身がサービスの提供者と見られます。

このページの要点

  • 運営者が契約の当事者になる形(運営者が利用者からサービスを受注する)と、場を提供する形(利用者と担い手が直接契約する)とで、規約の書き方も責任も変わる。
  • 担い手が家庭に雇われる形のあっせんで手数料を受けると、有料職業紹介に当たり得る。担い手が個人事業者として請け負う形かどうかを、規約と実態の両方で整える。
  • 身元確認・審査の内容を具体的に示し、保証しないことと、トラブル時に運営者が行う対応(連絡の仲介・利用停止など)を分けて書く。
  • 居宅訪問型のベビーシッターは、媒介型ならシッター本人が、運営者が自ら利用者と契約する形なら運営者が、認可外保育施設の届出の対象になる。マッチングを使う場合の届出事項(サービスの情報を掲載する送信元の識別符号など)にも配慮する。

規約の中心は「運営者が約束すること・しないこと」

家事代行やベビーシッターの利用者と担い手をつなぐマッチングサービスでは、運営者は二つの相手と契約します。サービスを使う利用者と、サービスを提供する担い手です。運営者が利用者と担い手の間の契約の当事者になるのか、場を提供するだけなのかで、規約の書き方も、事故のときの責任も変わります。

運営者の立場による違い
項目媒介型(場の提供)自社提供型(運営者が受注)
利用者が契約する相手担い手(個人事業主)運営者
担い手の位置づけ利用者と直接契約する独立の事業者運営者の履行補助者(業務委託又は雇用)
サービスの不具合の責任担い手が負う。運営者は自らの義務(審査・システム・情報管理)の範囲で負う運営者が負う
ベビーシッターの届出担い手(シッター)本人が届け出る運営者が設置者として届け出る
主な規約利用者規約・担い手規約・担い手と利用者の契約のひな形利用規約・サービス利用契約書・担い手との業務委託契約書

国の「子どもの預かりサービスのマッチングサイトに係るガイドライン」も、マッチングサイトを介したベビーシッターの利用は、保護者と保育者との契約に基づくもので、サイトの運営者は利用契約の当事者ではない、という整理を前提にしています。同時にガイドラインは、運営者も一定の責任を負うべきとして、登録時の審査や相談窓口などの遵守事項を定めています。媒介型を選ぶなら、規約の構造全体でこの立場を示しつつ、運営者自身の義務も書き分けます。

媒介型の規約の骨組み

条文例第◯条(本サービスの内容)

  1. 当社は、利用者と担い手との間の業務委託契約(以下「担い手契約」といいます。)の締結の機会を提供するものであり、雇用契約の締結の紹介、あっせん若しくは媒介又は労働者派遣を行うものではありません。
  2. 当社は、担い手契約の当事者とはならず、利用者又は担い手のいずれの代理人ともなりません。
  3. 担い手契約は、当社が提供するひな形に基づき、利用者と担い手の責任において締結されるものとします。
  4. 当社は、本サービスとして、プロフィールの表示・検索の機能、担い手契約の申込み・承諾・条件変更の機能、担い手契約に係る料金の収納代行その他これらに付随する業務を提供します。

運営者がひな形を提供する以上、ひな形の内容(キャンセル料・事故時の対応)が消費者契約法に適合しているかは、運営者の信用に直結します。ひな形も規約と同じ水準で点検しておきます。

担い手が家庭に雇われる形のあっせんで手数料を受けると、有料職業紹介に当たり得ます。担い手が自分で依頼を受けるかを決め、料金を提示し、作業の進め方を自分で決める、という独立性の要素を、規約と画面の設計の両方に入れておきます(許可・紹介・派遣の違い)。

媒介型と自社提供型を併用するとき

自治体のベビーシッター利用支援の制度などでは、補助の対象となる予約について、事業者自身が保護者と請負の契約を結ぶことを求める例があります。そのため、通常の予約は媒介型、制度の対象となる予約だけ自社提供型、という併用の形をとる運営者もあります。

  1. 特則の適用範囲(利用者が所定の方法で対象の予約であることを指定して申し込むもの)を決める
  2. その予約については、運営者が媒介の立場にとどまらず、自ら請負人として提供することを書く
  3. 請負の契約は別の契約書と個別契約で成立し、内容・料金・キャンセル・賠償はその契約書によることを書く
  4. 担い手は運営者の履行補助者として従事し、利用者と直接の契約関係を生じないことを書く
  5. 媒介型を前提とする規定は、対象の予約には適用しないことを書く

併用型では、利用者から見て「誰と契約しているか」が予約ごとに変わります。予約の画面、確認のメール、領収書に、契約の相手と適用される条項を表示します。担い手の側の規約にも、対になる特則を置きます。

登録の審査と身元確認

マッチングサービスの信頼は、登録の審査で決まります。運営者が行う確認の内容を、規約に具体的に書いておきます。確認した内容は示しつつ、担い手の能力や人柄を保証するものではないことも書き分けます。

ベビーシッターのマッチングでの登録時の確認(例)
確認すること方法
本人確認写真付きの身分証明書の提出
認可外保育施設の届出届出書の控えの提出
資格保育士証・幼稚園教諭の免許状などの写しの提出
研修都道府県知事等が行う研修の修了証の確認。受講状況をプロフィールに表示
過去の処分事業の停止命令などを受けたことがない旨の申告書
人物の確認登録説明会・面談で経験と活動の可否を確認
継続の確認登録後の活動状況と研修の受講状況を定期的に確認

すでに活動している担い手の登録を抹消する場合、担い手は個人事業者なので、継続的な業務委託に当たるかによっては、フリーランス法の中途解除の予告などが問題になることがあります。抹消の事由と手続を、担い手の規約に具体的に書いておきます。

利用者の登録の条件

担い手だけでなく、利用者の登録の条件も規約に書きます。ベビーシッターのマッチングでは、次のような条件を置く例が多く見られます。

  • 成年であること(未成年者は法定代理人の同意を得ること)
  • 子どもの親権者・監護権者であるか、これらの人から監護について正当な権限を与えられていること
  • 氏名・連絡先を登録し、写真付きの身分証明書などで本人確認を受けること
  • サービスを提供する地域に住んでいること
  • 規約とプライバシーポリシーに同意すること

認可外の居宅訪問型保育の指導監督基準は、保育者1人につき乳幼児1人を原則とし、兄弟姉妹を一緒に預かる場合で保護者の同意があるときに例外を認めています。規約でも、この基準を超える人数の申込みを禁止事項にしておきます。

手数料・収納代行・支払

手数料は、利用者・担い手の一方又は双方から受け取る形があります。利用者の手数料をキャンセルの場合も返さないとする条項は、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害との関係で検討の対象になります。担い手の手数料は、担い手に支払う料金から差し引く形が一般的です。

利用者が担い手への料金を運営者に支払い、運営者が担い手に渡す仕組み(収納代行)では、担い手に代わって料金を受け取る権限を運営者に与えることを規約に書きます。お金の流れによっては資金決済法の資金移動業との関係が論点になるので、決済サービスの会社の仕組みとあわせて確認します。

トラブルのときの運営者の責任

規約によく見られるのが、「当社は、当社に故意又は重大な過失がある場合を除き、一切の責任を負いません」という条項です。運営者と利用者の間の契約は消費者契約なので、運営者自身の義務違反(システムの障害、登録審査の過失、個人情報の漏えいなど)について軽過失の責任を全部免除する部分は無効です(消費者契約法8条1項1号・3号)。

事務所の改訂例:運営者の責任の書き分け

運営者の免責

改訂前当社は、担い手契約に関して生じた損害について、当社に故意又は重大な過失がある場合を除き、一切の責任を負いません。(依頼者原案)

改訂後当社は、担い手契約の当事者ではなく、担い手が担い手契約に基づき行う業務について、担い手契約上の責任を負いません。ただし、当社の本サービスの提供に関する義務の違反により利用者に生じた損害については、当社は賠償の責任を負い、当社の軽過失による場合の賠償額は、利用者が当社に支払った手数料の額を上限とします(当社の故意又は重大な過失による場合を除きます。)。

「当事者ではないので担い手の業務の責任は負わない」ことと、「運営者自身の義務違反の責任」とを分けて書くと、両方の主張が通りやすくなります。

トラブルが起きたときに運営者が行う対応(双方の主張の確認、連絡の仲介、担い手の利用の停止、自治体の担当課や消費生活センターの案内など)も、規約に書いておきます。不正の防止やトラブルへの対応のために、利用者と担い手のメッセージを確認することがあるなら、その目的と、常時監視するものではないことを規約とプライバシーポリシーに示します。

担い手が事業として役務を提供し、利用者が消費者である取引の場を提供する運営者は、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の取引デジタルプラットフォーム提供者として、担い手との円滑な連絡を可能にする措置などの努力義務を負う場合もあります。

作業代行型のマーケットプレイスで禁止しておくサービス

掃除や片付けなどの作業代行を、個人が出品し、ほかの利用者が購入する形のマーケットプレイスでは、出品できないサービスを規約で一覧にしておきます。法令で資格や許可が必要なサービスを、場の上で取引させないためです。

出品を禁止しておくサービスの例
サービス理由
医療行為・医療に当たる施術医師法などで資格が必要
法律の相談・書類の作成の代理など弁護士法などの士業の独占業務
届出のない子どもの預かり認可外保育施設の届出が必要(児童福祉法59条の2)
自家用車での有償の送迎道路運送法の許可などが必要
不動産の売買・賃貸の仲介宅地建物取引業の免許が必要

子どもの預かりを一般の作業代行と同じカテゴリで扱うと、届出のない預かりの場を提供することになりかねません。カテゴリごとに出品の条件を分け、子どもの預かりには届出・研修・保険の確認を条件にします。初めて会うときは公共の場で顔合わせをする、といった安全のための案内も、規約に付随する文書として整えておきます。

レビュー・評価と、チップの扱い

マッチングサービスでは、利用者が担い手を評価するレビューが、担い手を選ぶ重要な情報になります。規約には、レビューを運営者の判断で公開すること、実態に即していないレビューや不適切な内容を削除・修正することがあることを書いておきます。ただし、運営者がレビューの内容を都合よく書き換えると、口コミの改ざんとして信頼を失い、広告の規制との関係でも問題になり得るので、修正の範囲は誤字や個人情報の削除などに限ります。

利用者から担い手への金品(チップ・謝礼)の提供と、担い手からの要求も、名目を問わず禁止するのが一般的です。手数料の潜脱を防ぐとともに、担い手と利用者の関係を対等に保つためです。ベビーシッターのマッチングで、担い手に求める届出の内容はベビーシッターの届出、利用者と担い手の情報の扱いは家庭の情報・子どもの情報の扱い、手数料の返金とキャンセル料の関係は定期契約・チケットとキャンセル料で解説しています。

サイトの外での直接取引(媒介の潜脱)

サービスで知り合った利用者と担い手が、運営者を通さずに直接契約するようになると、運営者は手数料を失います。規約には、媒介の潜脱と引抜きを禁止し、退会した後も一定の期間に及ぶことを書きます。

違反した場合の損害賠償の額を予定するなら、固定の高額な違約金より、「潜脱がなければ受け取れたはずの手数料に相当する額」を基準にする方が、実際の損害との関連を説明しやすくなります。利用者に対して過大な額を定めると、消費者契約法10条や民法90条の観点から争われます。

ご相談の場面から:マッチングの規約のご相談

サイトで担い手を選ぶのは利用者ですが、料金は当社が一律で決めています。媒介型と言えますか?
料金を運営者が一律に決め、担い手が自分で提示できない仕組みは、担い手の独立性の要素を弱め、運営者自身がサービスの提供者だと見られる方向に働きます。担い手が料金を提示できる幅を設けるか、自社提供型として運営者が責任を負う形に組み替えるかを検討します。
子どもの預かりと、掃除などの作業代行を同じカテゴリで受け付けています。
子どもの預かりは、担い手に認可外保育施設の届出が必要になる業務です。一般の作業代行と同じ条件で出品・依頼を受け付けると、届出のない預かりの場を提供することになりかねません。カテゴリを分け、子どもの預かりには届出・研修・保険の確認を出品の条件にします。

よくあるご質問

マッチングサイトの運営者は、担い手が起こした事故の責任を負いますか?

運営者が担い手と利用者の間の契約の当事者でなければ、担い手の業務について契約上の責任は負わないのが原則です。ただし、登録審査やシステム、情報管理など運営者自身の義務違反の責任は免れず、「一切責任を負わない」という条項は消費者に対しては無効になります。

マッチングの規約は、利用者向けと担い手向けで分けるべきですか?

分けることをお勧めします。利用者と担い手では、運営者に対する権利・義務も、注意すべき法律(消費者契約法・フリーランス法など)も異なります。担い手と利用者の間で使う契約のひな形も、別に用意します。

ベビーシッターのマッチングでは、誰が届出をしますか?

運営者が場を提供するだけで、シッターが利用者と直接契約する形なら、シッター本人が認可外保育施設の届出をします。運営者がシッターを手配して自ら利用者と契約する形なら、運営者が設置者として届け出ます。

利用者と担い手のサイト外での直接取引を防ぐ方法はありますか?

媒介の潜脱と引抜きを禁止し、退会後も一定期間に及ぶとする条項を置き、違反の場合の損害額を手数料相当額で予定する方法がよく使われます。過大な額にしないことが、条項の有効性を保つ鍵です。

料金の収納代行をするのに、許可は必要ですか?

仕組みによっては、資金決済法の資金移動業との関係が論点になります。決済サービスの会社が料金を預かるのか、運営者自身が預かるのかなど、お金の流れを確認して判断します。

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