ベビーシッターの利用規約と、保育の確認書

ベビーシッターの規約は、子どもの安全のために、保護者から何を聞き、シッターが何をし、何をしないかを決める書類です。

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アレルギーや持病の情報を、保育のたびに確認する仕組みがないと、前回と状況が変わっていても、シッターには分かりません。

このページの要点

  • 保育の前に、健康状態、アレルギー、服薬、睡眠・食事の習慣、緊急連絡先、かかりつけ医を確認書で受け取り、変更があればその都度申告してもらう。
  • 医療行為に当たる行為、資格が必要な行為、保護者の同意のない外出など、行わないことを決める。
  • 事故・急病のときは、救急要請を最優先とし、保護者への連絡の順序と、医療機関の受診の判断を決めておく。
  • 子どもの生命・身体の損害について、事業者の責任を免除・制限する条項は置かない。賠償責任保険の内容を規約と書面で示す。

規約は、子どもの安全のための約束から組み立てる

ベビーシッターの利用規約は、料金やキャンセルの約束であると同時に、子どもの安全のための約束でもあります。保護者から何を聞き、シッターが何をし、何をしないか。事故や急病のときに誰がどう動くか。これらを、保育を始める前に保護者とすり合わせておくための書類です。

規約とは別に、利用者ごとの情報(健康状態・アレルギー・緊急連絡先)を受け取る「保育の確認書」と、緊急時の対応についての同意書を用意すると、規約は全利用者に共通するルールに集中できます。

契約の性質と、契約の相手を先に決める

見守りや世話を一定の時間行うベビーシッターの約束は、準委任(民法656条)として組み立てるのが素直です。時間制の料金や、いつでも解除できることとキャンセル料の関係とも整合します。自治体の利用支援の制度などで請負とすることが求められる場合は、「仕事の完成は、所定の日時・場所で子どもの保育を提供したことをもって当たる」と完成の意味を定め、物の品質に関する契約不適合責任の定めは置かない、と書いておくと、請負の条文が空回りしません。

契約の相手も明確にします。事業者が保育を提供し、シッターは事業者の履行補助者なのか、シッター個人が保護者と契約し、事業者は媒介するだけなのか。同じ会社の書類の中で両方の説明が混在していると、事故のときに誰が責任を負うのかが分からなくなります。

対象の子どもと、預かる人数

対象の子どもの年齢の範囲(例:乳児から小学生まで)と、シッター1人が同時に預かる人数を決めます。認可外の居宅訪問型保育は、保育者1人につき乳幼児1人が原則です(兄弟姉妹で保護者の同意がある場合を除く)。兄弟姉妹を一緒に預かる場合は、保護者の同意、事業者の承認、2人体制が必要な場合の料金を、サービス内容一覧と料金表の両方に書きます。

申込みをする人が、子どもの親権者・監護権者であること、又はこれらの人から監護について正当な権限を与えられていることを表明してもらい、親権・監護権を持たない子どもについて申し込むことを禁止事項に入れておきます。親戚の子や友人の子を預かってほしいという申込みに、誰の同意で応じるのかを明確にするためです。

初回の面談と、保護者不在で預かる条件

初回から保護者不在の保育までの流れ(例)

  1. 事前の面談

    保育の場所の確認、子どもの様子、家庭のルール、入室・退室の方法を確認する。シッターの身分証・資格・研修の受講状況・届出の確認を保護者が行えるようにする。

  2. 確認書・同意書の受領

    健康状態・アレルギー・服薬・緊急連絡先・かかりつけ医を確認書で受け取り、緊急時の対応の同意書に署名をもらう。

  3. 初回の保育

    初回は保護者の在宅中に行い、引継ぎや共同での保育で子どもとシッターが慣れる時間をとる。

  4. 2回目以降

    初回の確認が完了し、事業者が担当を承認し、同意書と緊急連絡先がそろっている場合に限り、保護者不在の保育を受ける。

保護者不在で預かる条件を「次の全てを満たす場合に限る」と書いておくと、条件がそろっていない段階で不在の保育を頼まれたときに、断る根拠になります。

健康状態・アレルギー・服薬

保育の確認書の項目(例)
お子様氏名・生年月日・続柄
緊急連絡先2件(保護者に連絡がつかない場合の連絡先を含む)
医療機関かかりつけ医・救急の際の医療機関
健康の情報アレルギーの有無と内容、持病・既往歴、常用薬・医療的な処置の有無
保育の注意食事・授乳の注意、睡眠の習慣と注意、抱っこ・おむつ・着替えの注意、禁止事項
更新内容に変更があったときは、次の保育の前までに申し出る
集めないもの保険証の番号・画像、マイナンバー、診療記録の画像、母子手帳の全ページ

健康の情報は、要配慮個人情報に当たることが多く、取得には保護者の同意が必要です。予約のフォームでは集めず、契約と同意書の手続が終わった後に、専用のフォームで受け取ると安全です(家庭の情報・子どもの情報の扱い)。

薬を飲ませることは、「原則として行わない」と定める事業者が多く見られます。行う場合も、医師の指示、保護者の依頼書、薬の一包化などの厳格な条件が必要です。規約、サービス内容一覧、緊急時の同意書の3つで、例外の有無と条件をそろえます。一つの書類では「当社所定の手続を経た場合はこの限りでない」と例外を置き、別の書類では「行いません」と書く、という食い違いは、事故のときに大きな問題になります。たんの吸引のように、無資格の人が行うことが制限される行為の余地を残す書き方は避けます。

病児・病後児の預かりを行うかどうかも、サービス内容一覧で決めます。通常のベビーシッターでは、発熱・嘔吐・下痢・感染症の疑いがある場合は受けない、とする例が多く、受ける場合は条件と書面での同意を別に定めます。

病児・病後児の受け入れの条件

体調不良の子どもの扱いの決め方(例)
状態扱いの例決めておくこと
発熱・嘔吐・下痢・感染症の疑い通常の保育では受けない当日の朝の体調の確認の方法、受けられない場合のキャンセル料の扱い
回復期で、医師の確認がある病後児として条件付きで受ける医師の確認の方法、保護者との連絡の頻度、書面での同意
保育中に体調が悪くなった保護者に連絡し、迎えや受診の判断を仰ぐ連絡がつかない場合の対応、救急の要請の基準

病児の保育を行う場合は、通常の保育とは別の料金・条件・同意書を用意するのが一般的です。受け入れの基準を一覧で決めておくと、シッターが当日の朝に迷わず判断できます。

睡眠中の安全は「免責」ではなく「注意義務」で書く

乳幼児の睡眠中の事故は、ベビーシッターの事業者が最も心配する場面の一つです。依頼者の原案で、事業者の定めた手順に従っていれば睡眠中の事故の責任を負わない、と読める条項を見かけることがあります。しかし、生命・身体の損害について過失の責任を免除する条項は、消費者契約法8条によって無効になります。事業者を守るのは免責の条項ではなく、注意義務の内容を明確にし、それを守った記録を残し、保険で備えることです。

事務所の改訂例:睡眠中の安全の条項

条項の考え方

改訂前当社の睡眠時の安全確認の手順に従って保育を行った場合、睡眠中に生じた事故について当社は責任を負いません。(依頼者原案を一般化)

改訂後当社は、睡眠中のお子様について、別に定める安全確認の手順に基づき、確認・記録・保護者への報告等の注意義務を尽くします。確認の頻度、確認の内容、記録の方法及び報告の方法は、同意書及び手順書に定めます。

過失の有無は、手順が合理的で、それが守られ、記録されていたかで判断されます。同意書も「免責への同意」ではなく「確認の方法への同意」として作ります。

確認の頻度は、年齢ごとに具体的に決めます。教育・保育施設などでの事故防止のための国のガイドラインは、睡眠中の子どもの呼吸・体位・睡眠状態を、子どもと職員の数に合わせて定期的に点検することを求めています。自治体の中には、0歳児は5分ごとなど年齢ごとの目安を示しているところもあるので、届出先の自治体の基準も確認し、年齢ごとの間隔を手順書に定めます。仰向けに寝かせる、顔の周りに物を置かない、といった基本的な事項とあわせて手順書に書き、確認のたびに記録します。記録は、事故のときに注意義務を尽くしたことを示す決め手になります。

入浴・外出・送迎

保育の内容と、決めておくこと(例)
保育の内容対応決めておくこと
おむつ交換・着替え・手洗い○(基本の保育に含む)
入浴△又は×年齢・浴槽の水位・保護者の在宅の要否などの条件。浴槽内での入浴介助を行わないとする例も多い
近所の公園などへの外出△行き先、時間、保護者の事前の同意
送迎(徒歩・公共交通機関・タクシー)△送迎先、受け渡しの相手、経路、交通費、緊急時の連絡先
シッターの自家用車による送迎×自動車保険の扱い、有償で人を運ぶことの法令上の問題があるため行わない
プール・海・川などの水辺×単独での監督は行わない

入浴の範囲を広げる場合は、規約と契約書で書き方をそろえます。規約では「身体を洗う介助を含む」、契約書では「身体に直接触れる行為は含まない」と食い違っていると、事故のときに「約束していない行為をした」のか「約束どおりの行為で過失があった」のかが争いになります。外出や送迎を行うなら、保険の対象に外出先・送迎中の事故が含まれるかも確認します。

引渡しと報告

保育の開始と終了のときの子どもの引渡しは、シッターと、保護者又は保護者があらかじめ指定した成人との間で行う、と決めておきます。引渡しのときには、保育中の様子(食事・睡眠・体調の変化・けがの有無)を口頭と書面で報告し、記録に残します。保育中の様子の報告は、マッチングサイトについての国のガイドラインでも、規約に定めるべき事項として挙げられています。

事故・急病のときの対応と、緊急時の同意書

依頼者の原案で「緊急時対応・医療同意書」という名前の書類を見かけることがあります。しかし、事業者やシッターが、子どもに代わって治療に同意する権限を持つことはできません。治療への同意は、未成年者については親権者が行うものです。同意書は、救急の要請と情報の共有に徹する内容にします。

条文例緊急時の対応・医療情報の共有についての同意書(骨子)

  1. 緊急時は、お子様の生命・身体の安全を最優先とし、119番通報、応急手当、緊急連絡先への連絡その他必要な措置をとります。緊急連絡先と直ちに連絡がとれない場合でも、救命のために必要なときは119番通報を優先します。
  2. 担当スタッフは、診断・治療その他の医療行為を行いません。当社及び担当スタッフは、医療行為への同意、治療方針の決定その他治療の代諾を行いません。
  3. 救急隊・医療機関・緊急連絡先に対し、お子様の氏名・生年月日、アレルギー・既往歴・常用薬その他の健康情報、症状・けがの状況と応急対応の内容、かかりつけの医療機関を共有することに同意します。
  4. 救急搬送時の付き添いは、可能な範囲で行うものとし、常に保証するものではありません。医療費の立替えは原則として行いません。
  5. この同意はいつでも撤回できます。撤回された場合、安全確保のためにサービスを提供できないことがありますが、代わりの安全確保の方法について協議します。

人の生命・身体の保護のために必要で、本人の同意を得ることが困難な場合の情報提供は、個人情報保護法27条1項2号により同意なく行えますが、事前に同意を得ておく方が運用が安定します。

実際には提携していない医療機関の名前を「提携医療機関」として書くことは避けます。依頼者の原案で、仮の病院名を書いたままの例がありましたが、それ自体が事実と異なる表示になります。かかりつけ医の情報を事前に受け取り、緊急時は救急を優先する、という実際の手順を書きます。

初回の面談で、家の中の安全を確認する

初回の面談では、保育の場所となる家の中の安全も確認します。保護者にお願いすることとして、刃物・薬品・ボタン電池・たばこなど、子どもが口に入れたり触れたりすると危険な物を手の届かない所に保管すること、ベランダや窓の鍵、階段の柵、浴室の扉の状態を確認しておくことを規約に書き、面談のときに一緒に確認します。

保護者の在宅中に行う産前産後の支援と、子どもだけを預かる保育とでは、適用する安全の基準や料金が変わります。保護者が同じ家の中で休んでいる場合を在宅中として扱うのか、子どものみを預かる場合はベビーシッターとして受け付けるのかを、サービス内容一覧で決めておきます。健康の情報の受け取り方は家庭の情報・子どもの情報の扱いで解説しています。

写真・見守りカメラ

シッターが利用者の家で写真や動画を撮影し、SNSに投稿することは、利用者と事業者の事前の同意がない限り禁止します。事業者が保育の様子を広報に使う場合は、別に写真撮影・掲載の同意書をもらいます。

保護者が家の中に見守りカメラを設置してシッターの様子を確認することもあります。規約で、カメラの設置を事前に知らせてもらうこと、録画の目的を子どもの安全の確認に限ること、録画をSNSなどで公開しないことを決めておくと、シッターのプライバシーと保護者の安心の両方を守れます。シッターの無断の撮影・録音・公開を禁止事項にした規約の例もあります。

延長・キャンセル・宿泊

延長は30分単位などで料金を決め、予定外の延長で深夜の時間帯に入る場合の扱いも決めます。キャンセルの段階は定期契約・チケットとキャンセル料と同じ考え方ですが、子どもの急な発熱によるキャンセルが多いので、病気によるキャンセルを減免するかどうかと、その基準を明記します。宿泊を伴う保育は、事前の同意と事業者の定める条件を満たす場合に限る、とする例が一般的です。

災害のときの引渡し

地震や火災などの災害は、保育の最中にも起こり得ます。災害が起きたときの避難の方針、保護者に連絡がつかない場合の待機の場所、子どもを引き渡す相手(保護者又は保護者があらかじめ指定した成人)を、初回の面談のときに保護者と確認し、確認書に書いておきます。公共交通機関が止まって保護者の帰宅が遅れる場合の延長料金の扱いも、規約で決めておくと、災害のときに料金の話で揉めずに済みます。

虐待が疑われるとき

児童虐待を受けたと思われる子どもを発見した人は、速やかに児童相談所などに通告しなければなりません(児童虐待の防止等に関する法律6条1項)。この通告は、守秘義務に関する法律の規定によって妨げられるものではないとされています(同条3項)。規約とシッターとの契約に、法令に基づく通告は秘密保持の義務に違反しないことを明記し、通告したときは事業者に報告することを決めておきます。

規約と、届出に伴う書面の関係

認可外保育施設の届出をしたベビーシッターは、契約が成立したときに、設置者の氏名・住所、料金、保険の内容、苦情の受付担当者などを記載した書面を交付しなければなりません(ベビーシッターの届出)。利用規約や確認書と内容をそろえ、保険の欄には実際の保険証券に基づく保険の種類・保険事故・保険金額を書きます。「最大○億円(保険契約条件に準ずる)」のような例示のままの記載は、実際の加入内容に書き換えます。

ご相談の場面から:ベビーシッターの規約のご相談

規約に「お子様の生命・身体に関わる事故の責任は負いません」と書いてもよいですか?
書いても無効になります。生命・身体の損害の責任を免除する条項は、消費者契約法8条により効力が認められません。安全確認の手順を決めて守り、記録を残し、賠償責任保険と子どもの傷害保険で備える方が、事故のときに事業者を守ります。
保護者から、熱が出たら解熱剤を飲ませてほしいと頼まれました。
薬を飲ませることを行うかどうかは、規約・サービス内容一覧・同意書でそろえて決めておく必要があります。行わない方針なら、その旨を事前に示して断ります。行う方針なら、医師の指示、保護者の依頼書、薬の一包化などの条件を書面で定め、その条件がそろわない場合は行わないと決めておきます。

よくあるご質問

ベビーシッターの利用規約に必ず入れる条項は何ですか?

対象の子どもと人数、保育の内容と行わないこと、事前の面談と保護者不在で預かる条件、健康状態・アレルギーの申告、事故・急病のときの対応、保険と賠償、外出・送迎、引渡しと報告、料金・延長・キャンセル、写真と見守りカメラ、虐待の通告と秘密保持です。

シッターが子どもに薬を飲ませてもよいですか?

原則として行わないと定める事業者が多く、行う場合も医師の指示や保護者の依頼書などの厳格な条件が必要です。規約、サービス内容一覧、同意書で例外の有無と条件をそろえます。

緊急時の「医療同意書」をもらえば、シッターが治療に同意できますか?

できません。治療への同意は、未成年者については親権者が行うものです。同意書は、救急の要請、緊急連絡先への連絡、救急隊・医療機関への情報の共有に徹する内容にします。

睡眠中の事故について、規約で責任を制限できますか?

生命・身体の損害の責任を免除する条項は、消費者契約法8条により無効です。軽過失の場合に限って責任を制限する条項も、子どもの生命・身体に関わる以上、同法10条により無効とされるおそれが高いので、置かないのが原則です。年齢ごとの確認の頻度などを定めた手順を守り、記録し、保険で備えることが、事業者を守る方法です。

見守りカメラについて、規約に何を書けばよいですか?

保護者がカメラを設置する場合は事前に知らせてもらうこと、録画の目的を子どもの安全の確認に限ること、録画をSNSなどで公開しないことを決めておきます。シッターの無断の撮影・録音・公開を禁止事項にする例もあります。

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