このページの要点
- 事業者が利用者から家事を引き受け、自社のスタッフ(雇用又は業務委託)に作業させる形は、職業紹介でも派遣でもなく、営業の許可は要らない。
- 求人(家庭)と求職(家政婦)の間の雇用関係の成立をあっせんし、手数料を受けるのは有料職業紹介で、厚生労働大臣の許可が必要(職業安定法4条1項・30条1項)。
- 事業者が雇用するスタッフを、家庭の指揮命令を受けて働かせる形は労働者派遣になり得る。家庭に派遣する場合も派遣法の許可の問題になる。
- 家庭に直接雇われる家事使用人には労働基準法が適用されない(同法116条2項)。家事代行会社に雇われて家庭で働くスタッフはこれに当たらず、労働基準法が適用される。
許可の要否は「誰が指示を出し、誰が契約するか」で決まる
「家事代行を始めるのに許可は要りますか」という質問への答えは、事業の組み方によって変わります。同じように家庭で家事をする仕事でも、誰が利用者と契約し、誰がスタッフに指示を出し、誰がスタッフを雇うかで、法律上の性質がまったく異なるからです。
| 型 | 利用者と契約する人 | スタッフに指示を出す人 | 必要な許可 | スタッフの労働法上の扱い |
|---|---|---|---|---|
| サービス提供型(請負・準委任) | 事業者 | 事業者 | 不要 | 事業者に雇用されるなら労働基準法が適用 |
| 家政婦紹介型(有料職業紹介) | 家庭と家政婦(雇用契約) | 家庭 | 有料職業紹介事業の許可 | 家庭に直接雇われる家事使用人は労働基準法の適用除外 |
| 派遣型(労働者派遣) | 事業者(派遣契約) | 利用者 | 労働者派遣事業の許可 | 派遣元に雇用され、派遣法と労働基準法が適用 |
| マッチング型(業務委託の媒介) | 利用者と個人事業主の担い手 | (担い手が自ら遂行方法を決める) | 原則として不要 | 担い手は個人事業主。実態が雇用なら別 |
サービス提供型:許可は不要
事業者が利用者から家事を引き受け、自社のスタッフに作業させる形は、職業紹介でも労働者派遣でもありません。これから家事代行を始める人の多くが選ぶ形で、営業の許可は要りません。スタッフは事業者が雇用するか、業務委託で依頼します。利用者に対して責任を負うのは事業者です。
この型で注意したいのは、スタッフが利用者の直接の指揮命令の下で働く形にならないようにすることです。利用者の指揮命令を受けて働くなら、実態は労働者派遣に近づき、許可のない派遣(いわゆる偽装請負)と評価されるおそれがあります。
条文例第◯条(業務の遂行)
- 本サービスの内容は、本契約、サービス内容一覧及び事前の打合せにより定めます。
- 本サービスの遂行の方法及び手順は、当社(担当スタッフを含みます。)が定めます。
- 利用者は、担当スタッフに対し、直接の指揮命令を行わないものとし、本サービスの内容に関する要望は、前項の打合せ又は当社所定の方法により当社に伝えるものとします。
家庭向けのサービスで、利用者が細かな要望を出すこと自体は避けられません。「何をするか」は契約で決め、「どのように行うか」は事業者が決める、という線を条文にしておきます。
家政婦紹介型:有料職業紹介の許可が必要
家庭(求人)と家政婦(求職)の申込みを受け、両者の間の雇用関係の成立をあっせんすることは、職業紹介に当たります(職業安定法4条1項)。手数料や報酬を受けて行う有料の職業紹介事業には、厚生労働大臣の許可が必要です(同法30条1項)。
「スタッフを紹介するだけで、契約は家庭とスタッフが直接結ぶ」という形は、一見すると事業者の責任が軽く見えますが、紹介した家庭とスタッフの間に雇用関係が生まれるなら、許可が必要な職業紹介です。許可を受けずに手数料を受け取ると、職業安定法の違反になります。
家事使用人と労働基準法
家庭に直接雇われて家事をする人(家事使用人)には、労働基準法が適用されません(同法116条2項)。家政婦紹介所の紹介で家庭と雇用契約を結ぶ家政婦は、この家事使用人に当たり得ます。
一方、家事代行会社に雇用され、会社の指示で利用者の家に行って家事をするスタッフは、家事使用人ではなく、労働基準法が適用されます。同じ家事でも「誰に雇われているか」で労働法の適用が変わるということです。家事使用人の労働基準法の適用除外については見直しの議論もあるので、紹介型の事業を検討する場合は、最新の状況を確認します。
派遣型:労働者派遣事業の許可が必要
事業者が雇用するスタッフを、利用者の指揮命令を受けて働かせる形は、労働者派遣です。労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です(労働者派遣法5条1項)。個人の家庭を派遣先とする形は実務ではまれですが、法人の顧客の事業所で清掃などを行う場合に、顧客の社員がスタッフに直接指示を出していると、派遣に当たるかが問題になります。
マッチング型:業務委託の媒介にとどめる設計
利用者と、個人事業主の担い手をサイトでつなぎ、両者が直接、業務委託の契約を結ぶ形は、雇用関係のあっせんではないので、職業紹介には当たらないと整理されています。ただし、これは担い手が本当に個人事業主として仕事を受けていることが前提です。
マッチングが雇用のあっせんにならないための確認
Q1. 担い手は、自分で依頼を受けるかどうかを判断できますか?
はい独立性の要素の一つを満たします。
いいえ雇用に近い関係と見られるおそれがあります。
Q2. 料金や作業の進め方を、担い手が自分で決めていますか?
はい独立性の要素の一つを満たします。
いいえ運営者や利用者が決めているなら、実態を見直します。
Q3. 報酬は、時間給ではなく、役務の対価として決まっていますか?
はい独立性の要素の一つを満たします。
いいえ時間給の実質があると、雇用の評価に傾きます。
名目が業務委託でも、利用者が担い手を指揮命令し、時間で拘束し、時間給で払う実態があれば、運営者の行為は無許可の職業紹介や、職業安定法44条で禁止される労働者供給と評価されるおそれがあります。規約と画面の設計の両方で、独立性の要素をそろえます。
マッチングの規約の書き方は、家事代行・ベビーシッターのマッチングサービスの規約で詳しく扱います。
すでに働いている人との契約を整えるとき
書面を交わさないまま、スタッフに仕事を頼み続けてきた事業者が、あらためて業務委託契約書を整えることもあります。口頭でも契約は成立しているので(民法522条2項)、新しい契約書は「これから先」の約束として作るのが基本です。
安全の基準や連絡手段の制限、現金の受領の禁止など、新しい義務を過去の期間にさかのぼって適用すると、本人が同意していなかった義務を後から課すことになり、かえって不利になります。新しい契約書は締結の日から将来に向かって効力を持つものとし、過去の期間は、新しい義務を課さない簡単な確認書で整理する、という二段の形が現実的です。業務委託契約書の中身は家事代行スタッフとの業務委託契約書、ベビーシッターの場合はベビーシッターとの業務委託契約書で解説しています。開業の段階で事業の形を選ぶときは、家事代行の起業・開業もあわせてご覧ください。
「派遣」という言葉の使い方
業界では「スタッフを派遣します」「ベビーシッター派遣」という言葉が広く使われています。言葉そのものが違法になるわけではありませんが、法律上の労働者派遣と紛らわしく、規約や契約書の契約類型の説明と食い違う原因になります。事務所がレビューした書類では、同じ会社の契約書が「準委任契約の性質を基本とする」と書き、規約が「請負により提供する」と書き、案内文が「派遣する」と書いている、という食い違いがありました。事故のときに、誰が誰に対して責任を負うのかが曖昧になります。
規約・契約書では「派遣」ではなく「訪問」「手配」という言葉を使い、契約類型の説明をすべての書類で一致させることをお勧めします。
行わない行為を、具体的に並べる
家事代行と一緒に、高齢者の生活の手伝いや産前産後の支援を行う場合は、資格が必要な行為との境界を、サービス内容一覧で具体的に示します。「医療行為・介護保険のサービスは行いません」の一文だけでは、スタッフが現場で判断できません。
| 分野 | 行わない行為の例 |
|---|---|
| 医療に関わる行為 | 薬を飲ませること・座薬や目薬の使用、注射、たんの吸引、経管栄養、傷の処置 |
| 身体の介護 | 入浴・排泄・移乗の介助、食事を口に運ぶ介助 |
| 産前産後の支援 | 医療職の専門的な判断を要する乳房のケアや授乳の指導(助産師等の資格を持つスタッフが行う場合を除く) |
| その他 | 高い場所での作業、専門的な修繕、危険物の取扱い |
どこまでが医療に当たらない行為かについては、厚生労働省の通知が、原則として医行為でないもの(体温の測定、自動血圧測定器による血圧の測定、軽微な切り傷の処置など)を示しています。行う行為を広げる場合は、通知の条件を確認したうえで、サービス内容一覧に条件を書きます。
資格が必要な行為との境界
家事代行と一緒に、高齢者の生活の手伝い、産前産後の支援、子どもの見守りを行う事業者は、医療や介護の資格が必要な行為との境界にも注意します。医師法、保健師助産師看護師法、社会福祉士及び介護福祉士法、介護保険法の境界に接する行為は、サービス内容一覧の「行わない行為」として具体的に列挙し、スタッフが現場で迷わないようにします。自費(保険外)のサービスであることも明記し、介護保険のサービスと誤認させる表示は避けます。
雇用か業務委託かを決めるときの業務の分担
- 雇用と業務委託の一般的な違いの説明や、業務委託契約書の作成は、行政書士が扱えます。
- 雇用する場合の労働条件通知書・就業規則の作成、社会保険・労働保険の手続、労務管理の設計、有料職業紹介事業・労働者派遣事業の許可申請は、社会保険労務士の業務です。
- 労働者に当たるかどうかが争いになった場合の判断は、弁護士への相談が必要になります。
ご相談の場面から:許可に関するご相談
- 家事が得意な人を家庭に紹介して、紹介料をもらう事業を考えています。
- 紹介した家庭とその人の間に雇用関係が生まれるなら、有料職業紹介に当たり、厚生労働大臣の許可が必要です。許可を取らずに始める場合は、自社が利用者からサービスを引き受け、その人に業務委託で作業を依頼する、サービス提供型に組み替える方法があります。その場合は、利用者に対して自社が責任を負うことになるので、規約と業務委託契約書をそろえます。
- 法人のお客様のオフィスの清掃を受けています。お客様の担当者がスタッフに直接指示を出していますが、問題ですか?
- スタッフが顧客の指揮命令の下で働く形になっていると、請負ではなく労働者派遣に当たるかが問題になります。作業の内容は契約と仕様書で決め、指示は自社の責任者を通じて行う運用に改めることをお勧めします。
よくあるご質問
家事代行に許可は必要ですか?
自社のスタッフで利用者から家事を引き受ける形なら不要です。家政婦を家庭に紹介して雇用関係をあっせんし手数料を受ける形は有料職業紹介に当たり、厚生労働大臣の許可が必要です(職業安定法30条1項)。スタッフを利用者の指揮命令の下で働かせる形は労働者派遣に当たり、派遣事業の許可が必要です。
家政婦紹介所と家事代行会社の違いは何ですか?
家政婦紹介所は、家庭と家政婦の雇用関係の成立をあっせんし(許可が必要)、家庭が家政婦の雇い主になります。家事代行会社は、自社が利用者からサービスを引き受け、スタッフの雇い主又は委託者は会社です。
家事代行のスタッフに労働基準法は適用されますか?
家事代行会社に雇用されて利用者の家で働くスタッフには、労働基準法が適用されます。家庭に直接雇われる家事使用人には同法が適用されません(同法116条2項)が、会社に雇われるスタッフはこれに当たりません。業務委託のスタッフでも、実態が雇用なら労働基準法が適用されます。
マッチングサイトの運営に許可は必要ですか?
利用者と個人事業主の担い手が直接業務委託の契約を結ぶ場を提供するだけなら、職業紹介には当たらないと整理されています。ただし、実態が雇用に近いと、無許可の職業紹介や、職業安定法44条で禁止される労働者供給と評価されるおそれがあります。
規約で「スタッフを派遣します」と書いてもよいですか?
言葉そのものが違法になるわけではありませんが、法律上の労働者派遣と紛らわしく、契約類型の説明と食い違う原因になります。「訪問」「手配」という言葉を使い、契約類型の説明をすべての書類で一致させることをお勧めします。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の事業に必要な条項は、サービスの内容、スタッフとの契約の形(雇用・業務委託)、申込みの受け方、利用者が事業者か個人かによって異なります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた家事代行・ベビーシッター・訪問型サービスの利用規約、申込書、スタッフとの業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / こども家庭庁 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド