このページの要点
- キャンセル料は、解除に伴う平均的な損害を超える部分が無効(消費者契約法9条1項1号)。前日・当日など時期ごとに段階を分け、根拠を説明できる額にする。
- 家事代行は、特定継続的役務提供の対象として政令で指定された業種(エステ・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービス・美容医療)に当たらない。
- 利用者の自宅を訪問して契約を勧誘し、その場で申込みを受ければ訪問販売になり、書面の交付とクーリング・オフ(特定商取引法9条)の対象になる。電話で勧誘して契約すれば電話勧誘販売になる。
- Webサイトで申込みを受けるなら通信販売になり、特定商取引法に基づく表記と、申込みの最終確認画面の表示が必要になる。
定期利用は、続けられなくなったときの精算で信頼が決まる
週1回・隔週などの定期利用は、利用者にとっては同じ曜日・同じスタッフで頼める安心があり、事業者にとっては売上の見通しが立つ仕組みです。一方で、引っ越し、出産、入院、家族の事情などで、続けられなくなる利用者は必ず出てきます。そのときにどう精算するかが決まっていないと、定期利用の仕組みそのものへの信頼を失います。
このページでは、キャンセル料、定期利用の変更・休止・解約、前払いのチケット、そして特定商取引法との関係を順に整理します。
定期利用の解約や前払いの返金は、事故やトラブルのときの賠償とは別の問題です。家財の破損や紛失のときの考え方は破損・紛失の賠償と保険、規約全体の組み立ては家事代行の利用規約で解説しています。
キャンセル料は「平均的な損害」が上限
消費者との契約では、解除に伴う損害賠償の予定や違約金は、同じ種類の契約の解除に伴い事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分が無効です(消費者契約法9条1項1号)。平均的な損害を超えることの主張は消費者の側からされますが、事業者の側も、キャンセル料の根拠を説明できるようにしておくべきです。消費者から求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努める義務もあります(同条2項)。
| キャンセルの時期 | キャンセル料の例 | 根拠として説明できること |
|---|---|---|
| 前々日まで | 無料 | スタッフの予定を他の予約に振り替えられる |
| 前日 | 料金の50% | 振替えが難しくなり、スタッフの予定が空く |
| 当日・開始直前 | 料金の100%(交通費の実費を加えることもある) | 振替えがほぼ不可能で、スタッフへの補償や移動の準備が生じている |
当日100%は、サービスを全く提供していないのに全額を受け取ることになるため、平均的な損害を超えると判断される余地があります。事務所が手がけた規約では、条文の文言は変えずに、当日の予約枠は振り替えが難しくスタッフへの補償が生じることなどを内訳にした算定根拠を、社内の文書として用意しておく形をとりました。規約にも「当社が平均的な損害(スタッフへの補償、移動の準備、予約枠の機会損失等)を合理的に勘案して定めた」と書き添えています。
キャンセル料で見落としやすいこと
- 子どもの急な発熱でのキャンセルは、ベビーシッターでは日常的に起きます。病気によるキャンセルを減免するなら、診断書の要否など一律の基準を決めておくと、利用者ごとの不公平が生まれません。
- 天災・交通機関の停止などで事業者の側が訪問できない場合は、キャンセル料を請求しないことを書いておきます。
- キャンセル料は、時期に応じて定める解約の損害金として、消費税の課税の対象外として扱われるのが一般的です。請求書の税区分は税理士に確認します。
訪問販売に当たる契約では、別の上限がかかる
利用者の家で契約を結んだ場合など、契約が訪問販売に当たるときは、消費者契約法とは別に、特定商取引法10条による損害賠償額の上限がかかります。サービスの提供の開始前に契約が解除された場合は契約の締結と履行のために通常要する費用の額、開始後に解除された場合は提供したサービスの対価に相当する額に、それぞれ法定利率による遅延損害金を加えた額までしか請求できません(特定商取引法10条1項3号・4号)。
事務所の改訂例:訪問販売の上限を規約に反映する
キャンセル料の条項
改訂前キャンセル料は、前日50%、当日100%とします。(依頼者原案。契約書の別の条で「スタッフが自宅等で契約を締結する場合は訪問販売に該当する」と書いている)
改訂後前項にかかわらず、本契約が訪問販売に該当する場合、当社が請求できる金額は、特定商取引法第10条に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した額を超えないものとします。
訪問販売に当たる場合があると自ら書いているなら、その場合のキャンセル料の上限も同じ規約の中で手当てしておく必要があります。
特定商取引法の取引類型は、申込みの場所と方法で決まる
家事代行・ベビーシッターは利用者の家でサービスを提供しますが、訪問販売かどうかは、サービスを提供する場所ではなく、申込みを受け、契約を結んだ場所と方法で決まります。取引類型は契約書が決めるものではなく、実際の勧誘と契約の事実で決まる法律上の区分です。
| 申込みの経路 | 取引類型 | 主な義務 | クーリング・オフ |
|---|---|---|---|
| Webサイト・LINE・メール・電話(利用者から) | 通信販売 | 広告の表示(特商法表記)、誇大広告の禁止、最終確認画面の表示 | 法定の制度はない |
| 利用者の家など営業所以外で申込み・契約 | 訪問販売 | 申込み・契約時の書面の交付、不実告知等の禁止 | 書面の受領から8日間(特定商取引法9条) |
| 事業者から電話をかけて勧誘し、電話で申込み | 電話勧誘販売 | 書面の交付、不実告知等の禁止 | 書面の受領から8日間(同法24条) |
通信販売にクーリング・オフがないのは、無条件の解除を認める規定が、そもそも通信販売の章に置かれていないからです。商品の通信販売には別に法定の返品の制度(同法15条の3)がありますが、対象は商品と特定権利で、家事代行やシッターのような役務には及びません。この2つは混同しやすいので、特商法表記を書くときに注意します。
見積りや初回の打合せで訪問した日に契約してよいか
最も悩ましいのが、見積りや初回の打合せ(プランニング)のために利用者の家を訪問し、その日のうちに契約してもらう場面です。利用者の家で申込みを受け、又は契約を結べば、原則として訪問販売になります。利用者が自ら契約を求めて訪問を依頼した場合(請求訪問)は適用が除外されますが(同法26条6項1号)、「説明を聞きたい」「打合せをしたい」という趣旨の依頼で訪問した場合は、この除外に当たらない可能性が高いと考えておくべきです。
初回訪問の設計を決める
Q1. 訪問の場で、契約の申込みを受けたり、契約を結んだりしますか?
はい訪問販売になります。法定の書面を交付し、クーリング・オフを前提に運用します。
いいえ次の問いに進みます。
Q2. 訪問のあと、利用者が自分の端末で、自分のタイミングで申し込みますか?
はい通常は通信販売の型を保てます。スタッフが即決を促さない運用ルールとセットにします。
いいえ申込みの経路を改めて決めます。
Q3. 「当日中に契約すれば打合せ料を無料にする」などの特典を付けますか?
はい即決を促す圧力として働くと、形式が通信販売でも実質は訪問販売と評価されるおそれがあります。特典の設計を慎重に検討します。
いいえ通信販売の型を保ちやすくなります。
実質が訪問販売なのに「通信販売なのでクーリング・オフはできない」と案内すると、不実告知(特定商取引法6条1項)に当たるおそれがあります。形式と運用の実態をそろえることが何より大切です。
事務所が手がけた規約では、打合せの場では契約を求めず、スタッフが退出した後に利用者が自分の端末で電子契約をする運用を前提に、次のように書きました。それでもスタッフがその場で申込みを受けた場合に備えて、訪問販売のクーリング・オフが適用されることも明記する二段構えにしています。
条文例第◯条(初回プランニング)
- 初回プランニングは、利用者が本契約の申込みの要否を主体的に判断するための機会とします。
- 担当スタッフは、初回プランニングの終了時に、その場で契約を決める必要はなく、家族等と相談のうえ申し込むことができる旨を案内し、実施の場所で本契約の締結を求めません。利用者は、担当スタッフの退出後、自らのタイミングで申し込むことができます。
- 前項にかかわらず、担当スタッフが利用者の住居その他営業所等以外の場所で本契約の申込みを受け、又は本契約を締結した場合は、本契約は訪問販売に該当し、特定商取引法に定めるクーリング・オフの規定が適用されます。
「契約を求めない」という消極的な書き方より、「その場で決める必要はないと案内する」という能動的な書き方の方が、運用の実態をそろえやすくなります。
クーリング・オフの条項は、書き方まで決まっている
訪問販売に当たる契約の書面には、クーリング・オフに関する事項と、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し、書面全体を8ポイント以上の文字で作ることが法令で定められています(特定商取引法施行規則7条6項・6条2項・3項)。書き方の要件を欠いた書面は法定の書面と認められず、クーリング・オフの期間が始まらないおそれがあります。その場合、利用者はいつまでもクーリング・オフができる状態が続きかねません。
電子契約で書面を交付する場合は、電磁的方法による提供について、法令の定める方法で利用者の承諾を事前に得る必要があります。法定の書面は、任意の同意書などと同じファイルにまとめず、少なくとも別のファイルとして交付するのが確実です。予約フォームの「内容を確認しました」のチェックは、社内の確認記録にはなっても、書面の交付の代わりにはなりません。
クーリング・オフの条項に書く内容
訪問販売に当たる契約の書面に、赤枠の中に赤字で記載するクーリング・オフの事項は、おおむね次のとおりです。日本訪問販売協会が公表している書面の作成例などを参考に、平易な言葉で、一つのページに収まるように作ると、枠が途中で切れずに読みやすくなります。
- 書面を受け取った日から8日間は、書面又は電磁的記録により、契約の申込みの撤回又は契約の解除ができること
- 事業者が事実と違うことを告げたり、威迫したりしたためにクーリング・オフをしなかった場合は、改めて書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができること
- クーリング・オフは、書面又は電磁的記録を発した時に効力が生じること
- 事業者は、損害賠償や違約金を請求できないこと
- すでに提供したサービスの対価を請求できないこと
- 受け取った金銭は、速やかに全額を返すこと
- 宛先(事業者の名称・住所・電話番号・メールアドレスなど)
クーリング・オフの規定に反する特約で、利用者に不利なものは無効である、という項も最後に置きます。これらを満たしていないと、法定の書面と認められず、クーリング・オフの期間が始まらないおそれがあります。
定期利用の変更・休止・解約
家事代行やベビーシッターの定期利用は、特定継続的役務提供(エステ・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービス・美容医療の7業種)に当たらないので、特定商取引法の中途解約のルールはかかりません。そのため、変更・休止・解約のルールは規約で決めることになります。ただし、解約の申出から効力が生じるまでが長すぎる条項や、重い違約金は、消費者契約法9条1項1号・10条の検討の対象になります。
「最長でも2か月」のように、申出から適用までの期間に上限を置くことが、このルールの勘所です。定期プランの解約は契約全体の終了を意味しないこと(スポット利用は続けられること)も書いておくと、利用者が解約をためらわずに済みます。
定期利用のルールを新しく作って、すでに定期利用をしている利用者に適用する場合は、事前に通知し、必要な同意を得ます。同意が得られない利用者には、従前の取扱いを続ける、と書いておくと、変更の手続が明確になります。
定期利用に割引を付けない設計も選択肢です。曜日・時間枠の優先、同じスタッフの優先的な手配、家庭ごとの引継ぎ情報の継続を、定期利用のメリットとして示す方法です。割引がなければ、中途解約のときに割引分を返してもらうという、違約金に近い問題も生じません。
料金の改定と、すでに利用している人
定期利用の料金を改定するときは、新しく申し込む人、すでに定期利用をしている人、すでに予約が確定している分、の3つを分けて考えます。事務所が手がけた料金表では、「新規の利用者には○月○日から、既存の利用者には個別に案内した適用日から、確定済みの予約は予約の成立時に案内した料金による」と、3つを書き分けました。
規約の変更の手続(民法548条の4)で足りるか、個別の同意が必要かは、変更の内容によります。利用者の権利を実質的に制限する変更は個別に同意を得る、と規約に書いておくと、判断に迷いません。料金の改定の手続そのものは、家事代行の利用規約で解説しています。キャンセルのときに家財の破損があった場合などの賠償の考え方は破損・紛失の賠償と保険、マッチング型のサービスでの手数料の返金の考え方はマッチングサービスの規約をご覧ください。
前払いの回数券・チケット
前払いの回数券やチケットを、自社のサービスにだけ使える形で発行すると、資金決済法の前払式支払手段(自家型)に当たることがあります。発行の日から6か月以内に限って使えるものは同法の適用から除外され、未使用の残高が一定の基準額を超えると届出が必要になる、という仕組みです。有効期限を6か月以内にするか、届出・供託の要否を確認するかを、発行の前に決めます。
中途解約や有効期限切れのときの返金も決めておきます。「一度支払われた料金は原則として返金しません」という書き方は、「原則」以外の場合がどれかが争いになります。開始前のキャンセル、途中の解約、事業者の都合による終了、利用者の都合による終了のそれぞれについて、返金の可否と精算の方法を書きます。
Webで申込みを受けるなら、表示と最終確認画面
通信販売として申込みを受けるなら、特定商取引法に基づく表記をWebサイトに置きます。料金(税込)、料金以外に必要な費用(交通費・延長料金・振込手数料など)、サービスを提供する時期、支払の方法と時期、キャンセル・解約に関する事項、定期利用の変更・休止・解約のルールを書きます。
オンラインの申込み画面で申込みを受ける場合は、単発・定期を問わず、申込みの最終確認画面に、サービスの分量(回数・時間など)、料金、支払の時期と方法、提供の時期、申込みの期間(定めがある場合)、申込みの撤回・解約に関する事項を表示する義務があります(同法12条の6)。交通費の呼び方(「訪問交通費」など)や金額は、料金表・規約・特商法表記・申込み画面のすべてで同じにします。
ご相談の場面から:定期利用・キャンセルのご相談
- 定期利用の解約を「3か月前までに申し出ること」としています。問題がありますか?
- 家事代行は特定継続的役務提供ではないので、特定商取引法の中途解約のルールはかかりませんが、申出から解約までが長すぎる条項は、消費者契約法10条などの検討の対象になります。スタッフの予定の調整に必要な期間を踏まえて、申出の締切と適用の時期を決め、最長でも2か月程度を超えないようにするのが無難です。
- 当日キャンセルは100%と書いても大丈夫ですか?
- 多くの事業者が使っている定めですが、平均的な損害を超える部分は無効になり得ます。当日の枠を振り替えられないことや、スタッフへの補償などを内訳にした算定の根拠を、社内の文書として用意しておくことをお勧めします。契約が訪問販売に当たる場合は、特定商取引法10条の上限にも従います。
よくあるご質問
家事代行のキャンセル料は、いくらまで定められますか?
消費者との契約では、解除に伴い事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。前々日まで無料・前日50%・当日100%などの段階を設ける例が多いですが、各段階の根拠を説明できるようにしておきます。
家事代行の定期契約に、法律上の中途解約のルールはありますか?
家事代行は特定継続的役務提供の対象の7業種に当たらないので、特定商取引法の中途解約のルールはありません。規約で変更・休止・解約のルールを決めますが、申出から適用までが長すぎる条項や重い違約金は、消費者契約法の検討の対象になります。
利用者の家で契約した場合、クーリング・オフはありますか?
利用者の家など営業所以外の場所で申込みを受け、又は契約を結んだ場合は訪問販売に当たり、法定の書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフの対象になります(特定商取引法9条)。利用者が自ら契約を求めて訪問を依頼した場合などは除外されますが、説明や見積りを求めただけの訪問は通常これに当たりません。
前払いのチケットを販売してもよいですか?
販売できますが、自社のサービスにだけ使える前払いのチケットは、資金決済法の前払式支払手段に当たることがあります。有効期限が発行から6か月以内なら適用から除外されます。未使用分の返金のルールも、場面ごとに規約で決めておきます。
Webサイトで申込みを受ける場合に必要な表示は何ですか?
特定商取引法に基づく表記(事業者名・所在地・連絡先・料金・料金以外の費用・提供時期・支払方法と時期・キャンセルに関する事項など)をWebサイトに置き、申込みの最終確認画面にもサービスの内容・料金・解約に関する事項などを表示します(同法11条・12条の6)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の事業に必要な条項は、サービスの内容、スタッフとの契約の形(雇用・業務委託)、申込みの受け方、利用者が事業者か個人かによって異なります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた家事代行・ベビーシッター・訪問型サービスの利用規約、申込書、スタッフとの業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / こども家庭庁 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド